2018年2月23日金曜日

ライナス・パラレル・ワンガリ

 相変わらず職場にバトンを持っていっている。それで日々昼休みに練習に勤しんでいるかと言えば、実はそんなことはなく、滅多にやらない。たぶん2週間にいちどくらい、15分くらいだけしか回していない(だから特に上達もしていない)。それだのに毎日必ずバトンを持って出勤しているのは、もはやライナスの毛布的な意味合いなのかもしれない。ないと不安でしょうがないということはないが、自分の中でさまにならない気持ちがする。そしてそれはやっぱり、DNA的な部分から来る、武器を誇示する男性的な発想なのかもしれない。紺色の市松模様の手作りの袋の、その中身はバトンだけど。刀の代わりにバトンを背負うバトン侍。ちょっと画期的なのではないか。え? 既に似たようなのがあった? ギター? そっかー……。残念!

 盛り上がっているピョンチャンオリンピックなのだけど、それなりにいろいろな競技を眺めていて改めて感じたこととして、カーリングが圧倒的につまらない。思えば初めてこの競技を知った十数年前から、ずっと忸怩たる思いを抱き続けている気がする。カーリングがどれほどつまらないのかと言えば、他人の見た夢の話くらいつまらない。もしかしたら本当に他人の見た夢なのではないかとさえ思う。もちろん世の中に他につまらないものはたくさんあるので、カーリングがこの世からなくなればいい、などとは言わない。あったっていい。しかしオリンピックの競技ではなければいいと思う。一体なにがどうなって、この世界ではカーリングがオリンピック競技になったのか。おそらくパラレルワールドの大抵の宇宙においては、カーリングはオリンピック競技ではないと思う。俺のとこの宇宙ではカーリングがオリンピック競技だぜ、と別のパラレルワールドの住人に話したら、「マジかよ、どんなおとぼけ宇宙だよ(笑)」「じゃあお前んとこの宇宙では麻雀もオリンピック競技なのかよ(笑)」などと爆笑されることだろうと思う。そしてそいつらはふたりとも抜けた陰毛を編んで作った眼帯を左目に着けている。そんなパラレルワールドが大半を占める。

 「もとい」という言い回しがある。言い間違えを即座に改めるときに使う言葉。「屁、もといウンコしたい」とか「目糞、もとい目やにが付いてるよ」という風に使う(用例が小学生)。辞書を開いたところ、もともとは「元へ」という号令から来ているらしいのだが、ぜんぜんそんな気がしない。そんな感触ではなくこれまで接していたので、急に軍隊用語だと言われても違和感がある。イメージ的には、やまとことばとか、あるいは漢語の書き下しとか、なんかそんな感じがあった。それはそれとして、なぜ急に「もとい」のことを確認したかと言えば、この「もとい」という言い回しは、文法とかまったく関係なく、言い換えたい言葉のあとに自由にぶっ込むことができるので、とても便利だ、というレベルを超えて、もはや言語を有するすべての人類が、使おうと思えば使えるのではないかと思ったのである。そうして捉えてみると、「もとい」というちょっと不思議な音が、どこかフランス語のように聴こえてくるのだった。いけるんじゃないか。ワンガリのMOTTAINAIに続くのは、パピロウのMOTOIかもしれない。あの世で待ってろ、ワンガリ!